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放浪の達人ブログ

マニ車

    【マニ車】

我が家では外出する際に玄関先で行なう儀式みたいなものがある。
去年家族でネパールに行った時に買った「マニ車」を回すのである。
一回転すればお経を1回唱えたことになる優れもの仏具だ。
別に仏教徒でもなければラマ教でもヒンドゥー教でもない無神論者だが
「オムマニペメフム」と彫刻されたマニ車を回すのは家族全員が癖になっている。
(ヒマな人は「放浪の達人ブログ カトマンズの朝」でネット検索してみてね)

皆さんご存知のようにネパールで巨大地震が起こり多数の被災者が出た。
去年俺達が泊まったパタンやバクタプルという世界遺産の村も瓦礫と化し、
立派な寺院群が崩れ落ちた映像を見て愕然として心を痛めている。
思い煩ったところで被災者が救われるわけでもなければ寺院が直るわけでもない。
せめて「届くかどうかわからない募金」をして自分を納得させるのみである。
またいつかネパールを再訪してお金を使ってこようと思っている。
(安宿に泊まり安食堂でしか食べないので復興の足しにはならないけど)

ネパールの首都カトマンズの中心にダルバール広場という世界遺産がある。
そこから500mもない距離のボロアパートで1週間居候をしたことがある。
電気は隔日通電、水は1日おきに給水車による配水、各部屋にはトイレなどない。
1部屋は寝室、もう1部屋はリビング兼キッチンという狭い家では夫婦と子供2人が
まさに肩を寄せ合うようにして慎ましく暮らしていた。
朝か夕方にアパートの屋上にあがり、洗面器2杯の水を大切に使って身体と髪を洗う。
食事は毎食ダルバートと呼ばれるカレースープを食べる。

そんな家庭に住む小学生低学年の男の子アビはお菓子を買ってもらえる機会も少なく、
学校から帰ってくると俺と一緒にたわいのない遊びをして笑っていた。
ある日俺はどうしてもお菓子を買ってあげたくて彼と一緒に駄菓子屋に出かけた。
「なんでも好きなお菓子を何個でも買っていいよ」と言ってみても
「お母さんに叱られるから」と10ルピー(10円)の物を1つしか選ばなかった。
「じゃあこれは俺の分、これはお父さん、これはお母さん、これはお姉ちゃんの分な」
そう言って200ルピー分のお菓子を買ってアパートに帰った。
帰宅した俺達は袋いっぱいのお菓子を質素なテーブルに広げた。
お母さんは「1日1個だよ!」と子供に言い聞かせていた。
ああ、昔の日本と同じだ。俺も子供の時はそうだったなあ。

おそらく今回の地震であのレンガ作りのボロアパートは倒壊しただろう。
あのエリアの立派な寺院でさえ揺れに耐えられなかったのだから。
あの家族の全員が無事だったのか怪我をしたのか、それすら知りようがない。
ネパールの地震はそんな質素だが暖かな家庭の生活を一瞬にして壊してしまった。
一刻も早く彼ら達の生活が元に戻るよう願わずにはいられない。
毎朝玄関先でマニ車を回す際に思うのはネパールのことである。

日本も最近地震や噴火が多い。プレートの上の島国だからなあ。
よりにもよってそんな国に原子力発電所があって原子炉の数は50基かあ。危ないよね。


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